Angie Lee

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「乱世備忘ー僕らの雨傘運動」監督インタビュー【7/11放送】

7月14日より日本公開となるドキュメンタリー映画『乱世備忘 僕らの雨傘運動』のチャン・ジーウン監督にインタビューをしました。

 

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私:監督さん、初めまして!

私は上海生まれ、日本育ちのアンジー・リー、中国名は、李娜です。この映画をみさせていただきました。前から、この雨傘革命という運動があるのを聞いたことがありましたが、本土では情報が少なく、日本で少し情報がありましたが、詳しい情報はあまりありませんでした。私はこの運動について前から関心がありました。どうして、中国の同胞の間で、そんなに思想の違いがあるのか、香港の若者たちは、何を感じていて、どんな風に考えているのか、そして、どうして、この運動が起きたのか、すごく知りたいと思いました。

 

監督:こんにちは!

 

私:香港で生まれた香港人ですか?

 

監督:はい!そうです。

 

私:監督は香港で生まれ育ったということで、香港はどんな場所ですか?今の香港はどうですか?

 

監督:香港はとても自由な場所で、香港が国際的な大都市となったのも、この点にあると思います。80年代、中国の改革開放前、台湾がまだ戒厳のとき、香港はすでに、華人にとってとても自由な場所でした。なので、外国人にとって魅力的な場所で、いろんな文化背景を持った外国の方が香港にやってきました。自由だったので、発展すごく早かったです。今日の香港は、少し様変わりしていて、中国へ返還されてから、ずっと民主主義を求めてきましたが、全部失敗に終わっていて、香港ではそれをずっとひきづってきました。香港は、中国へ返還後、徐々に、1人1票の民主化になるはずだった。でも、返還後20年が経って、香港はまだ民主化されていない。私達が理解している民主化と中国が主張する民主化に違いがあって、香港の人はそれに対して、疑問と反感を抱くようになった。それが、運動という形になって、雨傘運動が行われた主な原因の一つだと思います。

 

私:今回、この雨傘運動のドキュメンター映画を撮影をされました。以前から、ドキュメンタリーを中心に映画を撮影されていましたか?

 

監督:以前に、ドキュメンタリーの短編を2作品撮影したことがあります。ドキュメンタリーを撮るのが好きです。大学では、政治学を専攻していましたが、卒業して、政治関係の仕事に就かず、映画の学校に進学しました。元々は、政治を題材にした作品を撮ろうと思ってませんでした。卒業して、作品を撮る中で、やはり、自分が一番関心があるのは香港の社会ということに気づき、前に撮ったショートドキュメンタリーも、今回の映画も、全部香港の政治や社会に関する内容になっています。

 

私:ドキュメンタリー映画を撮影する上で、最も大事にしていることとテーマは何でしょうか?

 

監督:この「乱世備忘ー僕らの雨傘運動」を撮る時は、一参加者として撮影したので、これは、よくあるドキュメンターと違うところだと思います。テレビでよくみるドキュメンタリーは、色んな角度から撮影していますが、この作品は、参加者としての目線になっています。この運動に参加している私の視点や感じていることがダイレクトに、映画を見ている人にその肌感を感じてもらいたいと思いました。これは、私がずっと取りたかったドキュメンタリーの形で、今回は、特に、メインの出演者たちと近い距離で撮影をして、79日間密着しました。

 

私:監督も79日間参加されたんですか?

 

監督:僕は最初から、その現場にいて、偶然、撮影したいと思った若者たちに出会った。それで70何日も密着した。

 

私:最初から撮影の目的で参加されましたか?それとも、彼らに出会ってから撮影しようと思ったんですか?

 

監督:それはほぼ同時ですね!当時、9月、中国から「八三一」という決議が下されました。僕たちが思う普通選挙は、1人1票で、誰でも立候補する権利がある。でも、中国がいう普通選挙というのは、1人1票の投票権を与えるけど、立候補は中国政府側が選出するというものだった。なので、僕たちが信じてきた民主制とは違ったので、すごく怒りを覚えました。それで、絶対に、社会運動に参加したいと思った。

 

同じ頃、何人かの台湾の監督が香港に来てて、彼らは台湾のひまわり運動を撮っていた。彼らの作品を見て、僕も友人と、僕たちの視点でドキュメンタリーを撮影したいという話をして、それでこの運動に参加することになった。実は、制作において、参加者としても、撮影者としても、あまり計画はしていない、事前に撮影したい若者にもアポイントとっていないし、本当に、リアルに、その活動の中で僕の主役に出会いました。

 

私:香港の中で、年配の方と、今回運動に参加された若者の間で、大きな感覚の違いがあるのはなぜですか?

 

監督:僕たちより上の世代は、一部の方はすでに社会的な地位を築いていて、考え方も保守的だったりします。若い世代は、何も背負うものがなく、理想を追求しがち。これは、香港だけでなく、どの世代、どこの国でも同じだと思います。当時、香港では若者の奮起するが強まった。もちろん、若い人の中にも反対する人がいましたし、年配の人の中でも応援してくれた人がいました。基本的には、多くの若者は支持していて、多くの年配の方は反対してました。

 

年配の方が反対する主な原因は、 彼らは70,80年代の香港で育ってきて、香港の経済が発展し始めた頃、彼らの努力でたくさんのチャンスを掴みました。なので、努力すれば成功できると信じてる世代でもあると思います。彼らからすると、今の若者はあまり努力をしない、香港を乱していると思っています。若者からすると、香港はすでに成長していて、何でもあるけど、民主制がないと思っていて、なので、年配の方が嫌う方法で、声をあげた。

 

僕にもその経験があります。実は、僕の父はすごく反対しました。この運動で道路を占拠しましたが、これに対して、あまりよく思わなかった。父も民主制を賛成していましたが、この道路を占拠する方法は過激だと思われました。父は、もう歳だし、公務員として政府期間で働いていましたので、思想は結構保守的だと思う。

 

このドキュメンタリーを通して、世代間の溝を埋めたいと思っています。この映画の中に、僕のホームビデオを少し入れています。父が子供の僕をとってくれた映像です。当時の僕は、まだ子供で、香港で何が起きているのか、全くわからなかった。ホームビデオの右下には、日付が入っています。僕の成長の変化と、香港の変化を時間で結びつけたかった。なので、上の世代の方々、僕の父も含め、この作品を見れば、なぜ僕たちが運動するのかを知ってもらえると思います。僕は、言葉では、考えの違う人を説得できないけど、お互い理解することは大事だと思います。

 

私:お父さんがこのドキュメンタリー作品を見て、なんて言ってましたか?

 

監督:父はすごく喜んでいました。この運動で道路を占拠を支持してもらうことはできなかったけど、父が撮ったホームビデオが大きなスクリーンに映し出されて、自分のホームビデオが有意義なことに使われたので、それが嬉しかったみたいです。

実は、父は僕のことをすごく心配していて、自分の息子がドキュメンターを撮っているのを知ってるけど、具体的に何をしているのは知らなかった。この作品が海外の映画祭で賞を受賞して、海外でも上映されるようになったので、父も少しは安心したと思います。

 

 私:雨傘運動で若者たちが求める民主化、実現すれば香港の未来は明るいと若者たちは思っているということでしょうか?

 

監督:1人1票の投票権と立候補する権利はすごく大事だと思う、それは直接的に香港の未来につながらないかもしれないけど、その権利は、人への尊重で、香港にとっても大事なことです。香港は、民主投票による選挙において、成熟していて、市民の教育水準も高く、選挙への参加率も高い、なので、民主投票による選挙は香港に合っていると思います。もう一つ、先ほども言いましたが、香港はとても自由な場所です。香港は、経済的な強みがあり、でも、今中国・シンガポールの発展は香港より早く、香港の唯一の強みは、自由だと思います。民主化を進めるべきです。これは、手に入れないといけないし、守らなくてはならないとモノだと思います。

 

私:雨傘運動で若者たちが求める民主化、実現しなければ若者たちは何を危惧してるのでしょうか?

 

監督:当時、みんなで「無畏無懼」という言葉をスローガンにしていました。何も恐れないという意味ですけど、誰もこんなに大きな運動を経験したことがないので、恐怖はありました。9月、道路を占拠した時、警察は催涙弾を使ったり、年配の方は、警察が発砲するのを恐れた。年配の方は、1989年の天安門事件の記憶があるので、若い人たちに下がるように言ったが、多くの若い人は、警察が発砲すると思わないし、発砲したとしても気にしないと思っていました。「無畏無懼」と言いながらも、多くの恐怖を抱えていました。全てが初めての経験で、警察の催涙弾をこんなに近い距離で見ました。最初は、香港マフィアも来て、ケンカになりました。その全ての経験は恐怖でした。でも、この運動が終わった後、改めて恐怖について考えた時、それは、運動の中で経験した目に見える恐怖ではなく、香港の未来だったんです。この雨傘運動で、求めているいること何も得られませんでしたし、今もすごく圧力がかかっています。なので、自分たちの力では社会を変えることができないと感じています。よく知っているはずの香港が、徐々に自分たちの知らない香港に変わっていくのを見て、別の恐怖を感じました。香港はここ数年、本当に大きく変わりました。元々香港には報道の自由がありました。ある出版社が、中国の政府幹部のゴシップを暴露した途端、逮捕されました。他にも色々ありましたけど、今回の雨傘運動で感じた恐怖を、また立ち上がる勇気にしてほしいと思います。

 

私:今後、香港にどんな場所になってほしいですか?

 

監督:今、中国、上海、シンガポールはすごく発展していて、昔のような勢いがなくなったと思います。私は、上の世代のように、香港にもっと大きく経済的に発展して欲しいとは思わないけど、香港にどう変わるというよりも、元々の良い部分を保ってほしいと思います。例えば、自由ですね!言論の自由、好きなように議論すること。そして、法律ですね!香港が、一国二制度の元で、民主化であってほしい。これは、香港が返還された時の約束でもあります。そして、香港の本来の価値を保ってほしいと思います。

 

私:今、香港の若者たちに新たな動きはありますか?

 

監督:雨傘運動の後は、結構落ち着いてると思います。雨傘運動の時がピークだったと思います。この数年は、香港の人は結構失望してると思います。どの運動でもそうですが、時間をかけて、訴えていって、また別の運動に変化したりすると思います。なので、今は、雨傘運動に参加した若者たちは、本当は何を求めているのかを、整理しているところだと思います。この期間は、すごく無力に感じると思いますし、多くの若者はニュースを見るのも嫌だったりします。また、考えが纏まって、パワーが溜まった時に、また街に出て行くと思います。

 

私:最後に、日本のリスナーの皆さんに向けて、メッセージをお願いします。

 

監督:このドキュメンタリー映画、日本の若者に見て欲しいと思います。世界各国で上映され、観客の反応はすごくよかったです。マレーシア、台湾など、若い人でも、上の世代でも、この作品は、香港の雨傘運動についてですが、自分の国の状況に対して考える人が多かったです。日本で上映され、同じような効果があることを願っています。台湾では、雨傘運動をひまわり運動に重ねたり、マレーシアでは、マレーシア下院議員選挙の前後と重ねたり、日本の方にも自分たちの国に重ねて考えて欲しいと思います。この作品を通して、香港との文化交流を深めたり、日本の若者にとってヒントとなることがあればいいと思います。もう一つ言いたいのは、香港にとって、民主化は手の届かないモノだから、努力して手に入れようとしています。でも、日本人は、生れながら、民主的な環境がある、当たり前だからこそ、あまり大事にしなかったりするんだと思います。民主化は単なる制度ではなく、国民の参加があってこその民主国家なので、香港の若者たちの奮闘を見て、日本の若者が考えるきっかけになればと思います。

 

私:監督、ありがとうございした!

 

監督:ありがとうございした!

 

 

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香港の新世代による、香港、そしてアジアの未来を見つめる社会派青春群像劇ドキュメンタリーで、普通の若者たちの言葉と感情から現代の香港、そして“未来”を描き出す作品となっています。

 

乱世備忘-僕らの雨傘運動

7月14日「ポレポレ東中野」にて上映開始

 

 

今日のTOKYO FM WORLDにて、このインタビューの特集をしました。

今日放送の番組は、7月18日まで、radikoのタイムフリーで聞けます。
 TOKYO FM WORLD | TOKYO FM | 2018/07/11/水  20:00-21:30
http://radiko.jp/share/?sid=FMT&t=201806202TOKYO FM WORLD | TOKYO FM | 2018/07/11/水 20:00-21:30 http://radiko.jp/share/?sid=FMT&t=2018071120000000000

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